




スクリーニング検査とは
スクリーニング検査とは、疾病を持っているかわからない、無症状の人に対して行う検査です。集団に適用でき、安価で迅速に行えることが特徴です。
新生児に対して先天性の病気があるかどうか調べる「新生児マススクリーニング」や、集団検診、がん検診などスクリーニング検査にあたります。
スクリーニング検査の特徴
〇簡単に行えて信頼性・妥当性があること。
〇安価で集団に対して行えること。
〇生体を傷つけることが少ない=侵襲性が低いこと。
疾病を持っている人=陽性
持っていない人=陰性
とふるい分けを行うのですが、疾病を持っているのに検査結果が陰性だったり、持っていないのに陽性になってしまったりもします。
検査結果の種類について詳しく見ていきましょう。
検査結果の分別と意味
陽性と陰性
実際に疾病を持つ人で検査結果が陽性の場合を、真陽性といいます。
真は真実の真なので、本当の陽性ということです。
逆に、疾病を持たない人で検査結果が陰性の場合を真陰性といいます。
こちらも、本当に陰性ということです。
次に、実際の状態と検査結果が異なる場合を見ていきましょう。
実際に疾病を持つ人で検査結果が陰性の場合は偽陰性といいます。
偽の陰性ということで、本当は陽性なのに陰性がでてしまった状態です。
そして、疾病を持たない人で検査結果が陽性の場合を偽陽性といいます。
意味を忘れてしまっても、偽陰性という字面から偽の陰性=本当は陰性じゃないのに陰性と出ている=本当は疾病を持っている、と意味を類推することができます。
さらに、これらの数値を使ってスクリーニング検査がどれだけ正しくふるい分けをできているか、あるいは間違った結果がでてしまったかなどを知ることができます。
敏感度
敏感度は実際に疾病を持つ人で検査結果でも陽性と出た人、つまり真陽性の人の割合です。
陽性の人を正しく陽性と判別できているかがわかります。
真陽性の人数を、疾病を持つ人(真陽性+偽陰性)で割った数が敏感度となります。
特異度
特異度は、実際に疾病を持たない人で検査結果でも陰性と出た人、つまり真陰性の人の割合です。
陰性の人を正しく陰性と判別できているかがわかります。
特異度が高いということは偽陽性が少ないということです。
真陰性の人数を、疾病を持たない人(真陰性+偽陽性)で割った数が特異度となります。
敏感度と特異度は一方があがると一方が下がるという関係にあり、これをトレードオフの関係といいます。
有病率
有病率は、スクリーニング検査を受けた人のうち、疾病を持つ人の割合です。
疾病を持つ人(真陽性+偽陰性)を、検査を受けたすべての人(真陽性+偽陰性+真陰性+偽陽性)で割った数です。
陽性反応的中率・陰性反応的中率
陽性反応的中率は、検査結果が陽性と出た人のうち、本当に疾病を持つ人の割合です。
陽性反応的中率が高いということは、その検査で陽性と出た人が真陽性である可能性が高いということです。
敏感度と似ていますが、敏感度は疾病を持つ人にきちんと陽性という結果が出ているか?という検査自体の確かさを示しているのに対し、陽性反応的中率は陽性反応の人が陽性である割合を示しています。
敏感度の分母は真陽性と偽陰性で有病者のみですが、陽性反応的中率の分母は真陽性と偽陽性で、有病者とそうでない人が混ざっています。
このことから、陽性反応的中率は有病率に影響されるということがわかります。
もう少し砕いてみてみましょう。
有病率が下がるということは、陽性反応が出た人のうち真陽性である人が少なくなるということです。
つまり、陽性反応自体が減り、真陽性も減るということです。
正しく判定できていても
「有病率が下がる」=「疾病を持つ人自体が減っている」
ので真陽性・偽陽性どちらも減るってことです。
陰性反応的中率は、陽性反応的中率と同じで、検査結果が陰性と出た人のうち、本当に疾病を持たない人の割合です。
こちらも有病率の影響を受けます。
偽陽性率・偽陰性率
偽陽性の割合・偽陰性の割合です。
偽陽性率は偽陽性の人を疾病を持たない人で割った数、または1-特異度で求められます。
偽陰性率は偽陰性の人を、疾病を持つ人で割った数、または1-敏感度で求められます。
こちらは有病率に影響されず、同じスクリーニング検査であれば同じ値となります。
カットオフ値
また、スクリーニング検査においてはカットオフ値という単語も使われます。
カットオフ値とは、陰性と陽性を分ける値のことです。
カットオフ値がbの状態を基準に考えましょう。
カットオフ値が下がる、つまりaの位置に移動すると、陰性の数が減り、陽性の数が増えています。
疾病を持っているのに陰性になる人=偽陰性は減りましたが、疾病を持たないのに陽性となる人=偽陽性が増えました。
さらに、疾病を持つ人で陽性になる人も増えたので、敏感度も高くなります。
カットオフ値が上がり、cの位置に移動すると、今度は陰性が増え、陽性が減っています。
疾病を持たず、陰性になる人が増えたので特異度が高くなります。
カットオフ値を高くすると敏感度も高くなる場合






前述のとおり、カットオフ値というのは、陰性と陽性を分ける値のことです。
通常、カットオフ値を上げると、陽性になる人が減って陰性になる人が増えます。
「ある値を超えると陽性」になるからです。
例えば、尿酸値7.0mg/dlより高いと高尿酸血症、
HbA1c6.5%以上だと糖尿病、のような感じです。
尿酸値7.5mg/dlで高尿酸血症陽性の人がいるとします。
カットオフ値を上げて尿酸値8.0mg/dl以上にしたら、その人はどうなりますか??


陽性の人が減ります。
病気を持つのに陽性にならないので、敏感度は低くなります。

低栄養におけるスクリーニングでは、これが逆になります。
「BMI18未満の人を低栄養とする」というスクリーニングで、
カットオフ値を高くするとどうなりますか?


カットオフ値がBMI20に上がるとどうなりますか?


この場合は、カットオフ値を上げると、陽性が増えるので敏感度も高くなります。
基準値以上で陽性なのか? 以下で陽性なのか?
これによって、カットオフ値と敏感度・特異度の関係が変わってきます。
注意しましょう!


まとめ
用語が多く、また文章で書かれるとわかりにくくなるところですが、表と単語を覚えておけば、意味は思い出せるはずです。
各用語の意味や特徴をしっかりとらえましょう。
また、用語の意味だけでなく用語同士のかかわりについてもよく覚えておきましょう。
お試しの過去問
スクリーニング検査の評価指標についてこんな過去問が出ています。
2017年社会
疾病のスクリーニング検査の評価指標に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)敏感度は、スクリーニング検査で陽性であった者のうち、実際に疾病があったものの割合である。
(2)特異度は、スクリーニング検査で陰性であった者のうち、実際には疾病がなかったものの割合である。
(3)空腹時血糖値による糖尿病のスクリーニングにおいて、カットオフ値を高く設定すると、敏感度は高くなるが特異度は低下する。
(4)陽性反応的中度は、実際に疾病がある者のうちスクリーニング検査で陽性であった者の割合である。
(5)陽性反応的中度は、スクリーニングを行う集団における当該疾病の有病率の影響を受ける。
いかがですか?
わかりにくい問題ですね。
(1)と(2)は一瞬あれっ?と思いませんか?
あたってるような気がする…。
と思いきや、どちらも逆です!
疾病があった人のうち、陽性になった人、つまり真陽性の人の割合が敏感度!
疾病がなかった人のうち、陰性になった人、つまり真陰性の人の割合が特異度!
この文章だと、(1)と(2)はそれぞれ陽性反応的中度、陰性反応的中度の説明になっています。


(3)は、図を想像してみましょう。カットオフ値が高くなり右に移動すると…
陰性の範囲が広くなりましたよね!
ってことは、真陰性が増えて特異度が高くなったということです。
(4)は(1)と(2)の逆ですよね。
敏感度の説明文になっています。
ということで(5)が正解になります。
有病率が影響するのは陽性反応的中度と陰性反応的中度です!
繰り返しになりますが、こんな問題が出ることもあるので、用語の意味やかかわりをしっかり覚えておきましょう!
動画もあります!
ぜひご覧ください♪