



心不全とは
心臓が不全、ということで心臓が何らかの原因によりきちんと動くことができず、
全身に血液を送るポンプ機能が弱くなってしまった状態を心不全といいます。


心臓のポンプ機能が弱まると、全身に血液がいきわたらなくなります。
動脈へ血液を送り出すはたらきだけでなく、
静脈から血液を戻すはたらきも弱まってしまいます。


腎臓にいく血液が減るせいで尿量が減り、
水分が体内にたまってしまうことで浮腫がでることもあります。
また、血液を静脈から心臓へ戻す力が弱まることで静脈に血液がとどまり、
血管内圧が高まります。
血管内圧が高まると、血管から水分が押し出されたり、
血管に水分が戻らなくなり、組織間液が増えてしまいます。
これも浮腫につながります。


心臓が弱まると酸素や水分、それとともに移動する栄養素も体に巡らなくなり、不具合が起きやすくなってしまいます。



うっ血性心不全
心臓のポンプ機能の弱まると血液が巡らず、体や肺に停滞してしまいます。
これをうっ血性心不全といいます。







うっ血性心不全は、心臓の左右どちらで心不全が起きたかによって症状が大きく変わります。
これは、心臓の左右で違うはたらきを持つためです。
左心不全
心臓の左側は肺から酸素をもらった血液を全身へ送り出すはたらきをもっています。
左心不全では、肺からきた血液を心臓がきちんと送り出せないので、
肺に血液がたまってしまいます。

これを肺うっ血といいます。
左心不全になると酸素がいきわたらなくなり、
体の末端に酸素が足りず青白くなるチアノーゼを呈したり、
低血圧や動悸などの症状がでたりします。
また、座っている方が呼吸が楽になるといった症状も見られますが、
これを起坐呼吸といいます。
横になると心臓に戻ってくる血液が増えて、肺うっ血も増加するためです。

肺うっ血が増加すると、水分は組織間にとどまらず、肺胞へ染み出てしまいます。
こうして肺に水が溜まってしまうことを肺水腫といいます。
肺水腫は左心不全の代表的な症状です。必ず覚えておきましょう。

右心不全
心臓の左側が血液を送る側なら、右側は受け取る側です。
受け取るときにはまだ肺が関わっていないため、
右心不全では肺水腫などの症状はでません。
右心不全は左心不全に続いて起こることが多いです。
右心不全では静脈から肺へ血液を送ることができないため、静脈がうっ血します。
大きな静脈のある部位にうっ血がみられるため、
下肢の浮腫やそれに伴う体重増加、肝うっ血、胸水や腹水がみられます。
胸水は胸腔内に水がたまった状態を指します。
胸なので肺と混ざってしまいがちですが、肺と胸腔は別の部位です。


BNPとANP
心不全に関して覚えておきたい血液検査項目があります。
血漿BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)と
血漿ANP(心房性ナトリウム利尿ぺプチド)です。
どちらも心臓の働きが弱くなったときに出るホルモンで、
利尿作用により血圧を下げ、心臓の負担を少なくしようとします。
BNPもANPも心不全の時には心臓を助けようと分泌が増えます。

ナトリウム利尿ペプチドだけでなく、レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系や
交感神経の亢進でも心臓のはたらきを助けようとする動きがあります。


まとめ
左心不全と右心不全がごちゃごちゃになってしまいがちですが、心臓の図とともに、
どちらが不全になっているのか考えれば、忘れてしまっていても答えを導き出すことができます。
言葉だけでなく、図も一緒に覚えてしまいましょう!