





自然毒
自然毒は、植物や生物に存在する毒を指します。
それらを食することによる中毒を自然毒食中毒と呼びます。
自然毒は、とても身近な食中毒です。
見慣れたものや意外なものに毒が含まれていたりします。
それを知らずに食べてしまうととても危険ですので、しっかり覚えておきましょう。
今回はこれらの有毒成分と、有毒成分を含む場所について紹介していきます。
じゃがいも
じゃがいもに含まれる有毒成分はソラニンといいます。
じゃがいもの芽に含まれることで有名ですが、皮に含まれることもあります。
緑色の皮を見たことがありませんか?
じゃがいもの皮で、緑色の部分にはソラニンが含まれます。
じゃがいもが日光に当たりすぎたり、未熟だったりするとソラニンが増えます。
芽や緑色の部分を取り除いて食べましょう。


梅
梅の未熟な実にはアミグダリンという有毒成分が含まれます。
未熟な青梅や、特に種にアミグダリンが多く含まれます。
普通の青梅なら、果肉に含まれるアミグダリンの量は少ないので、1つや2つ食べても問題ありません。
実が成熟するにつれてアミグダリンが分解され糖になるので、食べられるようになります。



スイセン
スイセンやヒガンバナの葉や鱗茎にはリコリンという有毒成分が含まれます。
特にスイセンの葉は、ニラと間違えて食される例があります。
下痢や嘔吐などの症状が出ます。


ベニテングダケ
ベニテングダケやアセタケにはムスカリンという有毒成分が含まれます。
発汗や下痢・嘔吐などの症状が出ますが、2時間ほどで治まる場合が多いです。
とはいえ、ムスカリン中毒による死亡例もあるので、十分注意しましょう。
ベニテングダケにはイボテン酸という毒成分も含まれますが、これが旨味成分でもあるため、おいしいきのこでもあるようです。
名前の似たテングダケもムスカリンを含みます。
テングダケはベニテングダケよりも毒性が高く、危険です。



ふぐ
ふぐの卵巣、肝臓にはテトロドトキシンという神経毒が含まれます。
テトロドトキシンはふぐが作り出すわけではありません。
ふぐが餌を食べたりする過程でふぐの体に毒が蓄積されていくことで、ふぐが毒を持ちます。
このように化学物質が食物連鎖の結果、ある生物の体内に蓄積・濃縮されていくことを生物濃縮といいます。
テトロドトキシンは症状が出るのが非常に早く、
また体から排泄されるのも早いです。
運動麻痺から呼吸困難が引き起こされるため、死に至る場合もあります。
フグ毒が疑われる場合には、適切な処置をすることで毒が排泄され、回復することが可能です。
テトロドトキシンは加熱調理で分解できないので、しっかり加熱したとしても毒性は消えません。
ちなみに、テトロドトキシンはふぐだけに蓄積されるわけではありません。
ツムギハゼやヒョウモンダコなどもテトロドトキシンを持っています。


自然毒まとめ
自然毒は、食品と、それに含まれる自然毒の名前や場所を覚えておきましょう。
今回は代表的なものを紹介しました。
食中毒に関する問題は食べ物と健康の中でよく出ているので、余裕があったら他の食品についても勉強しておきましょう。
化学毒
化学毒による食中毒は、食中毒の中で件数が最も少ないです。
代表的な化学毒はヒスタミンです。
マグロやサバなど赤身魚に含まれるヒスチジンがヒスタミンとなり中毒を引き起こします。
魚を常温で放置したりすると、ヒスチジンが酵素によってヒスタミンとなります。
アレルギーのような症状がでます。
寄生虫
寄生虫による食中毒は、意外と身近です。
私達が食べるものに存在する寄生虫を体内に取り込むことで、食中毒症状が現れます。
アニサキス
特に有名で、たまにニュースなどでも紹介されるのがアニサキスです。
アニサキスはイカやサバに寄生している2~3cmほどの虫です。
目に見えます。
スーパーの魚売り場などでも、アニサキスに関する注意が書かれているところがあります。
アニサキスは、内蔵から筋肉へ移動します。
魚を丸のまま買った時は、早めに内蔵を取り除きましょう。
食べてしまうと、アニサキスが胃の壁を食い破ろうとして、激痛や嘔吐を起こします。
加熱や冷凍で死滅します。
お酢につけても死滅しません。



回虫
回虫は、野菜などについている卵を摂取することで体内に取り込まれます。
成虫になると大きいもので30cmくらいになります。
嘔吐や食欲異常などの症状がみられます。
日本では化学肥料が普及しているため数は少ないです。
輸入食材や無農薬・有機野菜などが原因食品としてあげられますが、
衛生観念の普及などもあり感染率は低いです。


日本海裂頭条虫
日本海裂頭条虫は長さが数メートルにもなる紐のような長い虫です。
条虫類はサナダムシとも呼ばれます。
サケやマスに幼虫の状態で寄生しており、ヒトの体内で成虫になると下痢や腹部膨満感などの症状を引き起こします。
-20℃で24時間の冷凍で死滅します。


サルコシスティス
サルコシスティスは馬肉の生食で感染します。
ヒトには寄生しないため、下痢や腹痛などの消化器症状を引き起こしたあと、
速やかに回復します。
馬肉を-20℃で48時間以上冷凍して防ぐことができます。


横川吸虫
横川吸虫はアユやウグイに寄生している2mmほどの小さな虫です。
ヒトの小腸粘膜に寄生し、下痢や腹痛の症状を引き起こします。
クリプトスポリジウム
クリプトスポリジウムは便や汚染された飲料水から感染します。
このため、同じ水を飲用した集団で感染した例もあります。
クリプトスポリジウムは殻に覆われており、この卵のような状態をオーシストと呼びます。
オーシストの状態で感染性があります。
水溶性の下痢や、腹痛、発熱などの症状を引き起こします。
塩素に強い抵抗性がありますが、加熱には弱いです。


トキソプラズマ
トキソプラズマは豚や鶏、猫などに寄生しており、ヒトにも感染します。
殆どの場合無症状ですが、リンパ節が腫れたり、発熱したりする場合もあります。
妊娠中にトキソプラズマに初感染すると、胎児が先天性トキソプラズマ症を発症することがあります。
視力障害や水頭症などがみられます。
産後すぐにわからなくても、成長するにつれ症状が顕れることもあります。


クドア
クドアはヒラメやマグロの筋肉に寄生しています。
小さいので肉眼で見ることはできません。
激しい嘔吐・下痢を引き起こします。
冷凍・加熱で防ぐことができます。




まとめ
種類がたくさんあるので、食中毒は苦手な方も多いかと思います。
原因となる食材や動物は身近なものばかりなので、覚えられるところから少しずつ覚えていきましょう。
「食べ物と健康」の中でも食品の安全性は出題数が多い傾向にあります。
食中毒もよく出るものですので、それぞれの特徴をしっかり覚えておきましょう。
