




糖尿病ってなに?


インスリンのはたらき
糖類を食べると血中のグルコース濃度が上昇します。
これが血糖値の上昇です。
するとインスリンの分泌が促進されます。
インスリンは、グルコースを筋肉や肝臓、また脂肪の細胞内へ取り込み、血糖値は正常値へ戻ります。
このように、血糖を維持するのがインスリンの主なはたらきですが、
インスリンはほかにも肝臓でのグリコーゲン合成促進、脂肪とたんぱく質合成作用、さらに成長促進作用を持ちます。


糖の取り込み~GLUT2、GLUT4
糖が細胞内に取り込まれる際にはGLUT2、GLUT4という輸送担体がはたらきます。
簡単に言うと、細胞にある扉のようなものです。
GLUT2は膵臓β細胞、肝細胞に存在する輸送担体です。
これらは、インスリンが出ていてもいなくても関係なくはたらいて糖を細胞に取り入れます。
GLUT4は筋細胞、脂肪細胞に存在し、インスリンの作用によりはたらくことができます。
輸送担体を含めたインスリン分泌から糖の取り込みまでの流れは、
①血糖上昇
②GLUT2を通って糖が取り込まれる
③インスリンが分泌される
④インスリンの作用でGLUT4がはたらき、筋細胞や脂肪細胞にも糖が取り込まれる
といった感じです。


糖尿病
このインスリンがきちんと働かなくなるのが糖尿病です。
糖尿病にはⅠ型とⅡ型があります。
Ⅰ型糖尿病
Ⅰ型はインスリンを分泌する膵臓のβ細胞が自己消化によって壊れてしまい、
その結果インスリンを分泌できなくなる糖尿病です。
糖尿病の5%がⅠ型といわれています。
こちらは、インスリン注射による治療が必須です。


Ⅱ型糖尿病
Ⅱ型は生活習慣が大きくかかわっています。
インスリンがたくさん必要になるような生活を続けていると、インスリンが出にくくなったり、効きにくくなったりします。
それが原因となるのがⅡ型糖尿病です。
運動療法や食事療法の効果が出るのがⅡ型です。
運動や食事によってインスリンの効きを良くしたり出やすくしたりするというわけです。
もちろん、症状によってはインスリン注射や服薬が必要となります。


糖尿病性ケトアシドーシス
糖尿病性ケトアシドーシスとは
Ⅰ型糖尿病にみられる状態としてよく上げられるのが糖尿病性ケトアシドーシスです。
アシドーシスとは、体がアシッド、酸性に傾いた状態をいいます。
ケトはケトン体のことで、グルコースが足りないときに代わりのものとして脂肪酸をもとに肝臓で作られるものです。
脳は、グルコース以外ではケトン体しかエネルギー源として利用できないので、飢餓状態ではケトン体がないと大変なことになります。
しかし、ケトン体は酸なので、たくさん作られすぎると体が酸性になってしまいます。
つまり、糖尿病性ケトアシドーシスという言葉を分解すると糖尿病のせいでケトン体が増えて体が酸性になってしまった、ということです。


糖尿病性ケトアシドーシスの原因①
Ⅰ型糖尿病患者でインスリン注射を中断したり、尿路感染症や心筋梗塞、膵炎などといった疾病に罹った場合に起こりえます。
Ⅱ型糖尿病患者では糖尿病性ケトアシドーシスになる頻度は少ないといえます。
インスリン注射の中断によりインスリンが足りない、
疾病によるストレスで普通のインスリン量では足りない場合に、
細胞内のグルコースが足りなくなりケトン体が生成されます。
ケトン体がたくさん生成されることで体は酸性に傾きます。


糖尿病性ケトアシドーシスの原因②
また、筋肉ではたんぱくを分解して肝臓で糖新生を行ったり、肝臓のグリコーゲンを分解したりしてグルコースをたくさん作ります。

作られたグルコースは血中に放出されますがインスリンがたりないため、
細胞内にグルコースをとりこめず、いつまでたってもグルコースが血中にいることになります。
それでも細胞にグルコースが入らないため、どんどんグルコースが作られ、血糖は上昇していきます。
血糖が上昇すると血漿の浸透圧が上昇します。
浸透圧を一定に保とうと、血中に水分が運ばれ、細胞では脱水が起こります。


まとめ
このように、ケトン体の増加による酸性状態と、高血糖による脱水がおこるのが糖尿病性ケトアシドーシスです。
高浸透圧性非ケトン性昏睡
Ⅱ型糖尿病でも似たような状態になることがあります。
高浸透圧性非ケトン性昏睡(高血糖性高浸透圧性昏睡)です。


高浸透圧性非ケトン性昏睡のリスク要因
Ⅱ型糖尿病患者の中でも特に高齢者に起こりやすいです。
糖尿病性ケトアシドーシスと同じように高血糖による血漿浸透圧の上昇により脱水が引き起こされます。
この脱水が中枢神経の細胞で起こることで、昏睡に至ります。
死亡率は推定で20%といわれ、糖尿病性ケトアシドーシスの1%に比べ高くなっています。
Ⅰ型と違って微量ながらインスリンははたらいているためケトン体がたくさん生成されることは少なく、ケトアシドーシスになることはほとんどありません。


ソフトドリンクケトーシス
2型糖尿病患者でもケトン体が体内で増えることがあります。
ソフトドリンクケトーシスといわれる状態です。
ケトーシスとはケトン体が多い状態で、進行するとケトアシドーシスとなります。
ソフトドリンクケトーシスは、ジュースなどの清涼飲料水を多く飲むことで起きます。
高齢者よりも若年者に起こりやすいといわれています。
糖が多く含まれるソフトドリンクを飲用することで高血糖・脱水状態になり、
それによる口渇をソフトドリンクでうるおそうとしてさらに高血糖になるという悪循環が原因です。


まとめ
糖尿病は現代の日本人と切っても切れない関係です。
アジア人は欧米人に比べインスリンの量が少なく、リスクが高いともいわれています。
糖尿病の合併症には糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害があります。
中でも糖尿病性腎症は透析導入の原因疾患の第一位となっており、国の医療費に関しても重要な疾病となっています。
また、患者数の多いⅡ型糖尿病では食事療法や運動療法が有効ということもあり、栄養士としても多く知識をもっていたい疾病でもあります。
国家試験を受ける方も受けない方も、ぜひ知識として頭に置いておいてください。

